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プロフィール
Takeshi Mogi
Takeshi Mogi
アイラの新聞「イーラハ」日本特派員
バグパイパー(ハイランド+スモール)
ライター&翻訳家などを兼務しています。
アイラ島やスコットランのWEBを運営しています。
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2008年03月01日

美しい日本の私 6

美しい日本の私 6

ザルツブルクでの勉強が続きました。相変わらずレーラー・ハオスでシャワーを借りていました。あるとき、そのレーラー・ハオスの廊下で隣のクラスのKさんに会いましたが、凄く暗い顔で沈んだまま歩いています。聞くと大変なホーム・シックで食欲もないと言います。少し話していると、それでもちょっと明るくなってきました。ラジオをつけて、音楽を聴いていると、ちょっとニコッとして、頑張れそうな気がするかな、と言いました。

レーラー・ハオスでは他にも仲良くなった人がいました。作曲を大学で習っている人でした。ある時、これから教会のオルガンを借りて練習をしますが、聴きに来ますかと誘われました。私は、そんな楽しそうな話はないとついてゆきました。

ザルツブルクの小さな教会で、神父さんがあれこれと説明した後、彼は練習を始めました。「これと、このキーからは音が出ません、キーを押すときは、やさしくと神父さん言ってたでしょ、骨董品なんですよ。建物と一緒でね。強く叩くと、壊れちゃうんです。新品のピアノみたいにはいかないんです。

彼はバッハをなめらかに弾き始めました。2曲で20分ほど。とても楽しいひと時でした。その後、二人でお茶に行きました。

ある時、別の知人と絵を描きに行きました。川辺に座って、彼は画用紙に直接ペンで建物を描き、色を塗ってゆきました。画学生なので、とても上手です。ただし、独特のタッチで、どの建物も塔のように背高にデフォルメされ、建物の色もひどく強調されて、元の風景の面影はありませんでした。私は鉛筆で風景のままを描いてゆきました。彼は用があると帰りましたが、私は楽しかったのでそのまま続けました。



すると、後ろから声がします。お年寄りが私に言います。「お前はなぜこの絵の左に橋を入れる、バランスが悪いだろう、消したほうが良い」と言います。面白いので、いろいろと話をして、最後には文通しようと住所を交換しました。住所を見ると、どうやら老人ホームのようでした。「毎日ここを散歩する、だが、それも長くは続かないよ、もうちょっしたら、死ぬんだから」と言います。まあまあ、そんな事言わないでと言い、必ず手紙を書くからと約束しました。

それほど頻繁にではありませんが、その老人との文通は2年ほど続きました。が、ある時小さな通知文つきで戻ってきました。その紙には「受取人死亡に付き、返送いたします」とありました。もっと頻繁に返事を書いてあげればよかったかな、と思いました。

Takeshi Mogi

この記事へのコメント
Takeshi Mogi 様
骨董品で壊れやすいからといって触れないようにして飾ってしまうのではなく、壊れやすいから優しく扱いながらも使うというところが、歴史と文化に親しんでいるというところをあらわしているような気がしますね(^^)

それはそうと、そのご老人との文通はきっとその方に生きる楽しみをおあたえになられていたんだと思いますよ
日本から来た若い友人が出来たと喜んでいらっしゃったと思います
Posted by モルト大好き at 2008年03月01日 07:18
今でもバッハを聞くと、その時の情景が思い出されるのではないでしょうか?女性の友達でしたらもっとドラマチック?
異国での夢のような時間ですね。
Posted by つきくま at 2008年03月01日 21:41
モルト大好きさんへ

そのとおりですね。彼らにしてみると、実用品で、しかも歴史も愛着もあるから使い続けるんですね。ただ、どうにもならない場合もあって、古い古い教会に、最新式のピカピカのパイプオルガンを見たこともあります。どうにもならないこともあるのです。

今でも他のお年寄りと文通を続けています。なるべく定期的に手紙を出すようにしています。

Takeshi Mogi
Posted by Takeshi Mogi at 2008年03月01日 23:43
つきくまさんへ

パイプオルガンのキーボードを見ると、思い出します。いや、その人面白い人で、いろいろな話をしたんです。ドラマチックとか、そういうものではなかったですね。ただ、やはり普通の時間ではなかったですね。とてもよい時間でした。

Takeshi Mogi
Posted by Takeshi Mogi at 2008年03月01日 23:46
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